小説投稿




48件の内、新着の記事から10件ずつ表示します。


[89] 執事の優雅なるサボり

投稿者: 空母 あんね 投稿日:2016年10月22日(土)22時59分49秒 KD182250246001.au-net.ne.jp  通報   返信・引用

第一話【眠たいから寝たいんです】

俺の名前はトルネコ。名に意味などありません。しいてゆうならば、ご主人様がつけたからそれでいいやという感覚。そんなテキトーなノリゆえに、気紛れで執事をさせてもらっています。

ご主人様の名前は、ゴーストさん。仮面つけてるわ、シルクハットだわ、見た目が不審者であります。しかも、声が50歳ぐらいなくせに独身。救いようがな……失礼しました。素晴らしく紳士的なお方です。

執事と言えど俺はダンピール。ぶっちゃけ朝は眠たい。昼も眠たい。夜も眠たい。眠たいから、仕事したくないんだ。ぶっちゃけ、執事の仕事はごはんもらって、眠る感じかと思っていました。

仕事をサボるとご主人様は、ご飯を抜こうとされます。ご飯をくれないとはなんたるブラック会社。許すまじですね。

まぁ、仕事はしないといけないのは分かります。ゆえに仕事をしているようで寝れる方法を三日間ぐらい考えましたよ。

それは、カクレクマノミのように木にぶら下がったまま眠ることです。何故カクレクマノミと思われたでしょう。

落ち葉が大量に落ちているこの季節。落ち葉拾いに専念しているように見せかけて実は、寝床を作るための秘密基地を作るのです。そして、その秘密基地で眠りにつく。流石私。これならサボれますね。あとは実践するのみ。

「てなわけで落ち葉拾いします」

執事ゆえ全てご主人様に報告をしたら、怒られてしまいました。なんでしょう?




[88] なり3、2のやつ

投稿者: Θ 投稿日:2016年 2月17日(水)22時02分33秒 i114-183-11-180.s05.a010.ap.plala.or.jp  通報   返信・引用

「人間は考える葦である…よく言ったもんだな」

パスカルの「パンセ」の言葉だ、確か「人間はひとくきの葦に過ぎない、自然の中で最も弱い生き物なのだ。だが、彼を押しつぶすために宇宙全体は武装しない」とかなんとか…

だがパスカルが今生きていたら、どう言うだろうな。

そんな事を思考しながら今では入手困難となった煙草を口に咥えマッチで火をつける、この数ヶ月色々なことがありすぎた。

********

数ヶ月前・寄御

「大規模なテロにより日本政府は転覆。これを好機と見て様々な組織が日本の覇権を狙い始めた、無論、話し合いなどではない暴力的、謂わば武力行使。当然のごとく日本全土は無法地帯となった、この状況を見かねたアメリカが介入、現実世界で殺し合いが行われている状況を打開するべく、VR技術を応用した電脳世界での戦争【代理戦争】を提案した。人々はその提案を呑み、死体が出ない、自然は破壊されない…クリーンな戦争の幕が開けるのであった…」

ふむ…と寄御は息を吐く。元々戦場カメラマンであるためか、それとも文を書く事が特技だったのかは分からないが、つらつらとノートパソコンに文を書きながら、その書いた言葉を無意識に口に出して読み上げていた。

パソコンの横には灰皿、灰皿には吸殻が山のように重なっている、そして文を書き上げれば背もたれに背をあずけ両腕を伸ばす、中々に出来た文だと及第点を点けてみる…寄御自身でだが。今、寄御が書いているのは今後、この男自身が取材する【代理戦争】の事についてだ。

現実世界で死体が出なくなったのは、良い事だと寄御は感じていた、だが良い事と言うのは安全や多くの命が失われないという様な捉え方ではない、寄御にとって良い事と言うのは代理戦争は本物の戦争とはだいぶ違うらしく、何千何万と言う兵士がドンパチやるわけではない1対1や2対2と言ったマッチ形式で戦争というには小さい戦いが行われるのだ。

ではこれの何処が良い事なのか、先ず【兵士の数が激減したことにより、兵士に直接話を聞ける確率が上がった】危険も伴うが、此方に争う意思はないと示せば、話くらいは聞けるのではないかと思っている。何とも安易な考えだが現実世界で何十人もの兵士に睨まれながら話を聞くよりかは寄御にとってはマシなのだ。

だが面倒なことに代理戦争には組織に属さなければいけないらしい、他人の命はどうでもいいが、自分の命は無駄にしたくないのは誰にとっても言えることだろう、と考えながら天井を見上げる。だがこれからこの寄御と言う男は考えもしないだろう、自分がとてつもなく危険な状況に身を置いた事を、自分がどれだけ安易な考えであったかを。



[87] All Night Another World #1

投稿者: 誠鏡 投稿日:2016年 2月14日(日)23時33分44秒 116-94-151-110.ppp.bbiq.jp  通報   返信・引用   編集済

城下街ルイナスの大通りに位置し、小洒落た「バイオリンと金色の音符」の看板を掲げる冒険者の店"黄金の旋律"亭、店内は常に賑やかで、暖かみのある橙色のランプの灯りに照らされている

店内BGMはバイオリンの音色を主体としたアイルランド風の音楽、長い金髪を後ろで一つに纏めた女性店員NPCが店内を慌ただしく駆け回り、店の奥では賭け事に興じる客もいる、酔い潰れた客は酩酊した眼差しを入店者に這わせ、また別の客はグラスを睨み続けている

カウンターの右端には暗い色合いの金髪の男、橙色の光を浴びた白銀色の板金鎧、カウンターに置かれた白銀の冑、背中には精緻な刺繍が施された赤色のマント、左腰には鞘に納められた長剣、騎士系の職業に就いたPLである事は一目瞭然だ

男はくわえていた煙草を灰皿に押し付け、スピリットで満たされたショットグラスを受け取ると、煽るようにして一気に呑み干し、ショットグラスの底をカウンターへと叩き付ける「やっと来たか」男は背後の気配を感じ取り、振り向きもせずに、独り言を呟くように背後の人物へと告げる

板金鎧の男の背後に立つのは、茶革を主体とした軽装鎧に身を包み、フードを目深に被る盗賊風の男「アーサー、俺は時間通りに来た…お前が、早過ぎるんだ」怪しい男はカウンター奥のボトルを指差して酒を注文すると、板金鎧の男(以後アーサー)の横の席に座る、橙色の光がフードの奥を照らし、縦長の瞳孔を持つ瞳が照らし出される

「ハッハー…リンクス、五分前行動って知ってるか?」アーサーは上機嫌な様子で言うと、盗賊風の男(以後リンクス)は問う「それで、いつから呑んでる?」「30分前からだな」間髪入れずの即答である、リンクスは呆れたような、半ば慣れを感じさせる表情で溜め息をつくと、透き通るような蒼のカクテルで満たされたカクテル・グラスを受け取り、くいとほんの少しだけ傾けて賞味する「…うん、美味い」

「…ッふぅ、そんなんで足りんのか?」アーサーは新しいショットグラスを受け取ると、淀みのない仕草で直ぐにそれを呑み干し、珍しい物を見るような視線をカクテル・グラスとリンクスに向ける「俺がアルコールに強い方じゃ無いのは、お前も知ってるだろう?…状態異常は苦手なんだ」

「まぁ、それは知ってるがよ…多少は酔っておいた方が良いんじゃねぇか?」アーサーは視線をカウンターの奥に戻し、ゆっくりと肘をついて言うと、腰に下げた小袋からクリスタルを取り出す「…確かに、素面だと厳しそうな気もするが」リンクスはゆっくりとカクテル・グラスをカウンターに置き、アーサーの持つクリスタルをぼんやりと見やる、クリスタルは緑色の光を放ち、少しずつ一つの光条へと収縮しながら、立体的な像(ホログラム)を映し出す…

…それは、特徴的な円錐型の螺旋を成した"ダンジョンマップ"だった



[86] AW物語

投稿者: クロウ 投稿日:2016年 2月 3日(水)16時30分35秒 h115-165-37-208.catv02.itscom.jp  通報   返信・引用

1話「魔王と龍神」

体感型オンラインRPG 『AnotherWorld』、専用の機器を使いゲームの世界にダイブすることができる革命的な新時代のファンタジーゲーム。その世界ではあるものは世界各地を巡り商売をし、あるものは無数に蠢く魔物を退治し、あるものは仲間と和気藹藹にプレイし、あるものはこの世界での頂点を目指していた。そんな世界で作られていく数々のドラマ、冒険譚。
そしてまたどこかで1つの小さな小さな物語が始まろうとしていた。
これはある1つの異変から始まった特に壮絶でも世界の危機でもなんでもない普通の日常である。

☆ ☆ ☆

20xx年1月30日晴れ、私は今フィアースの森最奥の開けた場所にいる。
晴れと言ってもこの世界では常に最適温度だ。晴れているところは常に晴れ、雨が降る所では常に雨だ
時々イベントやらクエストやら環境をいじるモンスターやらのせいで天気が崩れるときもあるが、まぁそんなことはめったにない。

いや、そんなことはどうでもいい。まずは状況確認だ、今私は合いたくもない奴に呼び出され待ちぼうけを喰らっている…それも2時間もだ、いや私も人が良すぎる何故2時間も待っていられるのだ!?
「よし、来たら殺そう」

そんな物騒なことを口走る彼女の名前はキリューバス、勿論実名ではなくこのゲームでのHNだ。
長い銀髪に藍色の目の冷たそうな風貌が目につく幼女もとい少女のような彼女。
眉間に血管を浮かばせ今にでも暴れ出しそうな彼女は誰かを(2時間も)持っているようだ。
しかしみての通りこの場には彼女だけしかいない。何をやっているのだ、と苛立ちを募らせ口にこぼす。その時だった、茂みの奥から気配を感じた。
「遅いぞ、全く…」

不機嫌そうに彼女はぶつぶつと文句をこれでもかと吐き散らす。
その様子に茂みから現れた「彼」は苦笑いを浮かべて言う
「申し訳ない、少々馬鹿の相手をしていてな」

20前半だろうか、紅い衣に少し厳つい見た目の青年は困り顔でそういった。

(未完)



[85] ACE COMBAT INFINITY ~Aviator Carnival~

投稿者: 誠鏡 投稿日:2016年 1月22日(金)22時44分2秒 116-94-161-152.ppp.bbiq.jp  通報   返信・引用   編集済

世界観の説明(スルーも可)


・"ユリシーズの厄災"

1999年7月に発生した、1万個余りの小惑星群の落下による大規模災害
パイロットの間では、単に"ユリシーズ"や"あの災害"と呼ばれる
1994年に木製軌道上の小惑星「1986VG1"ユリシーズ"」に、未知の小惑星が衝突
それによって発生した小惑星群が、地球との衝突軌道に乗っている事が判明し
小惑星群全てのの軌道を逸らす事は不可能だと判断した世界は
隕石迎撃の為の最終手段、超巨大地対空レールガン施設の建造を進める
結果として人類は、自分達の種を存続させる事に成功した
―――世界秩序の崩壊と引き換えに
隕石の落下によって既存のインフラは壊滅的な被害を受け、世界経済は大混乱に陥り
エネルギー資源の枯渇、必然的に発生した大量の難民等、多くの問題が発生する
特に被害の大きいユーラシア大陸では、アジア諸国・南欧州諸国が破綻を免れる為に地域毎に共同体として再編
当然、資源枯渇や生活環境の悪化に伴い、世界各地で紛争が勃発
国連やヴェルナー社の支援によって徐々に沈静化していくものの、結果として世界地図を大幅に塗り替える事になる


・ユリシーズ落下による環境への影響

人体に害をもたらす環境変化は、落下から20年が経過した現在も確認されていない
ただし、隕石の大量落下による磁気の乱れ、NEOとして地球軌道上に残留した隕石群が磁気的な影響を及ぼしているのか、電子機器に少なくない影響を及ぼしている
特にレーダー誘導等の既存技術はシーカーが磁気の乱れに影響され、以前のような十分な誘導性能を発揮出来なくなってしまっている
最も強い影響を受けているのはステルス技術である
どのような影響を受けているのかは目下捜索中であるが、既存のステルス概念では従来のような低探知性を発揮できなくなってしまっている
レーダーに映り難い事は変わり無いが、レーダー照射の強い正面から相対すると、相手レーダーに探知されてしまうようになっており
ステルス機の先制攻撃能力が低下した事と、ミサイル等のレーダー誘導性能低下を合わせ、空戦は再びドッグファイト性能が注目される時代となった
(ステルス機自体は、運動性能の向上と低探知性の差がドッグファイト時に優位性をもたらす事もある為、一概に陳腐化したとは言い切れない)


・ヴェルナー社

正式名称は"ヴェルナー・ノア・エンタープライゼス"
大規模災害"ユリシーズの厄災"が発生し、壊滅的な打撃を受けた世界の復興に多大な貢献を行った世界的な大企業
元々は派遣傭兵部隊を主軸に置いた軍需企業だったが、災害によって発生した大量の難民の積極的な雇用を表明
各地の災害難民特別受け入れ地区で大手を振って活動できるようになり
エネルギー開発や宇宙開発の分野にまで事業を拡大し、インフラ関連の改善や世界情勢の安定化に貢献する事で、世界的な大企業へと上り詰める
軍事関連においては、新型開発プラントの実用化に成功し、既存兵器に大幅な価格の低下をもたらし、世界の軍事体制を大きく変える事となる


・ヴェルナー社の兵器

"アドバンスド・オートメイデット・アヴィエーション・プラント"と呼ばれる強化型コンピューター数値制御式の新型開発プラントの実用化によって、既存兵器の価格は軒並み低下する
特に航空関連兵器に関してはそれが顕著であり、従来では国家の支援が無ければ運用できないような軍用機が、企業単位でも運用できる程の価格低下を見せている
これに伴って、大国は軍事関連企業に対して、大規模な技術開示や運用許可を取り付け、軍の規模を縮小させると同時に、軍事関連企業に国防行為を委託するようになる
これを受けて軍事関連企業の需要は高まり、様々な軍事関連企業が設立、結果として数多くの傭兵が生まれる事となった


・ヴェルナー社の航空関連兵器

ヴェルナー社が実用化させた新型開発プラントの影響を最も色濃く受けている分野であり、多くの軍用機が企業単位での運用が可能となった
各航空機はヴェルナー社の共通規格を持っている為、他国産の航空機であっても、ヴェルナー社製の物ならば少しの調整のみで運用が可能である
航空機に搭載される兵器類も、ヴェルナー社製の物であれば基本的には共通規格で生産されている為、ある程度は融通が効くようになっている
各航空機には、基本的に多用途ミサイル(ゲーム中で言う通常ミサイル)と、三種の特殊規格兵装(ゲーム内で言う特殊兵装)の内1つを搭載可能
多用途ミサイルは、ヴェルナー社の新型開発プラントで開発された兵装で、従来のミサイルとは違い陸・海・空全ての標的を捕捉出来る画期的な物
特殊規格兵装は、多用途ミサイルでは対応する事の出来ない状況に備え、一つの目標に特化した兵装(投下式対艦爆弾・戦術レーザー等)である


・試験機及び研究機の実戦投入

空戦が再びドッグファイト性能重視の時代になった事に伴い、パイロット達の注目を集めるようになったのは、試験機や研究機と言った機体
そういった機体は、次世代の技術が組み込まれ、従来機と比べて高い性能を持つ物が多い為、ステルス機の優位性が崩れた事もあって、その性能に注目が集まった
そこで各国は、ヴェルナー社と共同で試験機及び研究機を実戦に向けた仕様に再開発、部品や素材、生産ライン等も見直され、従来機より安価で実戦投入可能となった


・パイロット事情

ヴェルナー社が安価で航空機を生産するようになった結果、航空機に搭乗するパイロットの方が不足するようになった
その為、各国の軍や傭兵派遣会社はパイロット確保に取り組むようになる、軍縮によって軍からドロップアウトしたパイロットを採用したり、パイロットの育成開始年齢を引き下げ、より早期の内に優秀なパイロットを確保するようになる
女性パイロットも認められるようになり、少数ではあるが女性のエースパイロットも現れ始めた



[84] 会敵

投稿者: クロウ 投稿日:2015年12月22日(火)11時07分42秒 h115-165-37-208.catv02.itscom.jp  通報   返信・引用

『会敵A』
~Stupidity is sometimes tricky move~


白沢さんから聞いた話の中で出会ってはいけない人物の話を何度か聞いたことがある。
その中でも一番インパクトがあった人物の名前を、特徴を今でも鮮明に覚えている。
その人の名前は「天草 天」
白く長い髪に赤く美しい眼をもった少女?様な見た目をした男?性別は分かりにくいらしい中性的な顔つきをしているのだろう。容姿も美しいらしい、天使と揶揄されるほどの美貌を持っていると聞いた。しかしその性格は破綻している、人の死に様を癒しと感じると…あの人は言っていた。「出会いたくはないですね」その時は出会うはずもないだろうと楽観視しながら白沢さんにそういったことを今でも覚えている。


運命とは残酷である。


出会ってしまった。
電脳(新宿)の戦場、その中心。交差点の真ん中で両手を広げ微笑んでいる美しい殺人鬼に
巻き上げられる赤色が混じった土煙の中その幻想的な光景を僕は、愚かにも見とれてしまった。そこに逃げるという考えはなかった…思考が追いつくときにはもう遅かった天草 天はゆっくりその顔を僕に向けた。
(しまっ気づかれた)
口に出すよりも早く天草は行動に移った。
「superacid、溶かし殺せ」
背中が冷やりと悪寒が走る。天草の足元の水溜りが大きくうねった、いやあれがあいつのパートナーなのだろう。その水溜りから無数の触手が伸びる。その触手が大きく鞭のようにしなったと思った瞬間、風を切る音とともに僕たちに向け振り下ろされる。

「ディー!」

叫んだ。隣で光の刃で出来ている【セイバー】を抜刀している女性型パートナー・ディルタ・eins に向け大きく。

「わかってますマスター」

彼女は冷静だった。僕の考えが筒抜けのようにすぐに行動に移した。
彼女は僕の背中に腕を回し抱え能力「輝く刃翼の光剣」を使い宙に浮かび上がる。

「舌を噛まないように、喋らないでください」

少し冷たい言い方だ、でもこれが彼女の普段通りの喋り方…僕は気にしない。
僕は無言でその言葉にうなずいた。それを見ると彼女は頭上から降ってくる触手をホバー移動で横に移動し回避する。自分たちがいた場所が抉れている、違うこれは

「溶けている…酸か溶岩……色的に」

ディーが先に口を開き言ってしまう。
「酸ですね、それも王水…いやあれは超酸ですね。下手に触れたら死にます」

超酸、聞いたことのない言葉だ。しかしわかることがある。
コンクリートを溶かし王水と並べられる、それだけであの酸の恐ろしさ理解できる。
下手に近づくとあの酸の餌食に、いや近づけば天草も自由には動けないそう考えた。
口に出さずともディーは僕の考えをくみ取り行動に移す。
天草の口から意外そうな声が聞こえた。

「へぇ…向かってくるんだ」

天草は言った。その貌には楽しそうな、まるでおもちゃをもらったばっかりの子供のよう顔をしている、笑っているのだ。
それを見て僕は恐怖する。戦いのさなかこんな笑みを浮かべている人は見たことがなかった。彼は異常だ。僕の中で彼に対する明確な恐怖が生まれる。

「ディーあの触手には触れるな!あとあいつには極力近づかず遠距離から攻撃して!」

近づいてはいけない。本能が訴えている、「彼は人間ではない」そう感じてしまった。

「了解マスター、ビットと光剣を展開しオールレンジ攻撃に移ります」

彼女は機械的に言う。背中に装備している4本の短い光剣のうち2本を放ちガン○ムのファンネルのように空中に放ち自身の動きと合わせ並走させる。
さらに彼女を守るようにビットと呼ばれる拳大の光の弾が生み出される。

「向かってきなよ、じゃないと……殺すよ?」

フフフ、彼は笑う。なぜ笑っていられるのか僕には理解できなかった。
触手が伸びる。縦横無尽に触手が振り回される。ディーはビットと光剣を巧みに使い向かってくる触手を切り落とし、焼き払う。イケる、これなら。そう思った矢先に異変は起きた。

「ッツ…なんだこれ、めまいが」

唐突に眩暈が襲い掛かる。ディーに支えられているにもかかわらず重心がずれ高速で移動している中、地面に叩き付けられそうになるところをどうにかディーの肩に捕まっている右腕に力を籠め踏みとどまる。

「…高濃度の有害ガスを検知。原因はこれですね、マスター抱えます少し飛んでください」

無茶な、飛べるはずないだろうと目線をくれる。いやそこじゃない、なぜそんなガスが当たりに霧散しているのか。

原因はすぐに解けた。さっき蒸発させた触手だ。
だが問題は原因が解けても解決策が思い浮かばないことだ。息を止めようにも数分しかもたないだろう、下手したら酸欠で死ぬ。
そう考えている間に僕はディーにお姫様抱っこをされていた。体重の軽さが幸いした(不服)。

「どうしますか?いったん撤退した方が賢明かと」

ディーは淡々と告げる。彼女はいつだって冷静だ、だから僕の考えは今どんなに必死に考えようが彼女以上の答えは出ない。しかし、だが僕は言う。

「いや、このままあいつに向かってくれ、あいつは…天草はここで倒さないといけない気がするんだ」

無謀。ただひたすら無謀である。毒ガスを浴び、息も絶え絶えの状態では勝利は望めないだろう。そういう顔を一瞬したディーだがすぐに

「わかりました、あなたに任せます」

それでも彼女は了承してくれた。たとえどれだけ無謀な策だったとしても彼女は僕の答えに「NO」とは言わない、言わなかった。今回は流石にNOといわれるだろうと思ったけどそんなことはなかった。

「ありがとう。このまま接近してあれを熱で斬る、いけますか?」

ディーは無言で頷く。
ディーは移動しながら僕を降ろし足もとに光刃を置きそれに僕は足を乗せた。僕を抱えながら急加速する
左手で【セイバー】を持ち天草達に急接近。刹那暴力圧倒的暴力、無数の液状の鞭がディーに、僕に向け振られる。右に加速避ける。左に加速避ける、真っ直ぐに加速避けれない左手を振るい【セイバー】で切り裂く最後、太く、大きくしなる触手が振り下ろされた瞬間だった、蒸発した一瞬のことだった。【セイバー】が輝き太い触手を焼き切ったのだ。これには僕も驚愕。

「ディー?!今のは!?」
「それは後です、今は…あれを」

目前に、天草がいた。余裕の笑みを浮かべその右手に握られる球体、フラッシュバン。
そう思った時にはすでに遅かった視界が奪われ強烈な衝撃に襲われた。
手を放してしまった。ディーの肩から手を放してしまった僕はバランスを崩し顔面から地面に突っ込むように崩れ墜ちてしまうだろう。咄嗟に両腕を前にだし受け身をとって難を凌ぐが、フラッシュバンの影響で未だに目と耳に感覚がない、視界は真っ白だ。だから叫んだ、言っていることがディーに通じることを信じて。

「行け!ディー!!」

上手く言えただろうか、耳が聞かないからわからないし視界が真っ白だから確認もできない。でも、彼女なら今この現状下で《守桜 天斗》が言うであろうことを察して行動してくれるだろうと信じている。

………………………………

僅かな静寂。目が少し聞くようになったようだ。守桜のその目に映った光景は……
溶けて原型がない薄い翡翠色の液体が付着した瓦礫の山、その上で笑みを浮かべる天草、その横に佇む1m前後のスライム…そしてその瓦礫の下で倒れているディーだった。

「あ…あぁ……」

声にならない。僕の判断ミスで彼女をあそこまで追いやってしまった、最初から逃げればよかったんだパートナー失格だ…僕のミスで彼女を死なせるわけにはいかない…思考が止まる、頭の中がクリアになる、必要以上に冷静になっていく。

殺サないと(生きナいと)殺さナいと(生きなイト)殺サレるディーが死ぬ、させない…絶対にッ!
僕は剣を取り立ち上がる。近くに柄だけの剣があった多分ディーの物だろう、それを左手で持ち上げ空を切ると翡翠色の光の刃が伸びる、僕の方の剣も同じだ振るうと光の刃が出る、けどまだ出さない。

「天草、お前を殺す」

冷たい、何処までも冷たい声が地獄に響いた。



会敵Bに続く
To be continued




[83] 奇妙な依頼

投稿者: 誠鏡 投稿日:2015年12月19日(土)22時57分42秒 116-94-161-152.ppp.bbiq.jp  通報   返信・引用   編集済

よぉ、ガンスミスのトラヴィス・チャーチルだ
大規模テロが起きてから、山ほど稼がせて貰ってる
戦場が電脳世界に移っても、仕事の量はそこまで変わらなかった
VR技術が使われているからか、変な依頼が増えたんだが…
じゃあ、今日はそれを紹介していこうか

[Case.1 穏やかそうな男]

その日は、市街地の商店街で店を開いてたんだ
問題の男が来る前にも、何人か来店と依頼があったりしてな
気分も上々、酒瓶でも開けようか、と思った所で…

「…すみません、やってますか?」

問題の男が来たんだ…が、店を開いてたのは建造物の中-しかもラーメン屋-でな
ちょっと混乱したんだろう、メシでも食いに来たみてぇだったよ
店を宣伝する為に書いていた路上ペイントは、しっかりやったんだが

「ああ、やってるよ」
「ありがとうございます…それでは、銃の改造をお願いしても?」
「早速だな…それじゃ、改造したい銃を見せてくれ」
「はい…これです」

男が取り出してきたのは「UTS-15」、ブルパップ式のポンプアクション散弾銃だな
第三世代型で、マウントレールにはレッドドットサイトが乗っかっててな
その時にはまぁ、「良い趣味をしている」ぐらいにしか思ってなかったんだが

「ほぉ…で、どんな改造をすりゃ良いんだ?」
「ここに、"斧"を取り付けてほしいんですが…」
「…は?」

男が指差したのはアンダーバレル、スリムなハンドグリップがある場所だった
正直に言って滅茶苦茶驚いたよ、見た目は温厚そのものだったからな
まぁ、ショットガンなんて武器を使ってる時点で、たかが知れたもんだが

「…待て、今なんと?」
「斧です…バイキングの斧みたいに、何かの縁に引っ掛けられるような」
「斧ねぇ…ジョン、そんなもんあるか?」
『二つほど』
「あるんかよ」

今更だが、この喋るアタッシュケースはジョン、俺のパートナーだ
事あるごとに青汁を進めてくる以外は、良いヤツだよ
俺の仕事道具はこいつの中に入ってるんだが、時々身に覚えの無い物も入っててな
この前は釣竿が…閑話休題、俺は早速、その斧を取り出したんだ

「ふーッ…どっちが良い?」
「…じゃあ、その黒い方で」
「わかった」

斧なんて取り付けた事なかったんで、かなり苦戦した
ハンドグリップの前半分に太く横溝を刻んで、斧には同じ幅の突起を付けてな
取り外し可能にしたんだが…もう、二度とする事の無い作業だと思う

「ありがとうございます…良いですね、これ」
「まぁな…いまいち良さが分からんが」
「早速試してきます…では」

男はカウンターに代金(日本円)を置いて帰っていった、口笛を吹きながら
振り返る時に見えたんだが、首筋にタトゥーが入っててな
店(を開いている建造物)の外に見えたパートナーらしき影は、2mを越してたか
その直後に斬撃音と笑い声が聞こえた時には、肝を冷やしたよ…

『顔色が悪いですね…青汁、飲みますか?』
「いや、遠慮しとく」

[Case.1 End]



[82] 3.2外伝(プロローグ)

投稿者: 護衛ロボット 投稿日:2015年12月19日(土)12時49分54秒 p7902dede.gifunt01.ap.so-net.ne.jp  通報   返信・引用   編集済

寄御 城蟻の著作「傷の無い遺体たち」より抜粋

伝説の超大型テロリズムからはや数年がたつ。アレによる犠牲者は、テロリズムの余韻のほうが多いと聞く。しかしなにがあったのか、いつの間にか時は流れ、まるでゲームで(しかし命はかかった)権力争いが行われている。何も不思議なことではない。テロリズム以前も、パチンコや競馬があり、株のシステムがあった。それが電脳世界での意識投下によるゲームになっただけだ。
ゲームになっても人は死ぬ。しかし、その遺体は全く死ぬ原因がなく、スイッチの切れたタンパク質の塊のようになる。私が思うに、ゲームとはいえど意識を完全に投下する。Attorney(いわゆるプレイヤー)の頭が電脳世界での擬似的な「死」を理解しきれず、現実の脳はスイッチをきるのだ。
それゆえ、パートナーもシンプルにされている。一人に対し一つなのも、一つにつきできることが少ないのもAttorneyの脳に負担をかけ、ブレーカーを落とされてしまうからだ。
Attorneyの遺体は全く傷がない。テロリズムの直後はそこらじゅうに肉片が転がり、衛生は悪く人は狂気に満ちた。それは無くなったが、決していいことにならなかった。確かに埋葬まで綺麗なままだが、それは上位の人間の常識だ。下位のAttorneyは、あるものは移植のためバラバラにされ、またあるものは実験材料として売られ、またあるものはネクロフィリア(死体愛好家)に愛でられ、またはカニバラー(人食家)に食われ、死姦(気になっても調べないほうがいい)を好むやつに使われ、とにかく黒い経済で潤いはじめた。だからこそ、何も知らない奴らはゆったり生きられるのだ。



[81] ポケットモンスター外伝SS-時空を超えた願い-

投稿者: クロウ 投稿日:2015年12月17日(木)07時02分31秒 h115-165-37-208.catv02.itscom.jp  通報   返信・引用   編集済

第1章 【崩壊】


―トキワの森奥地―
夜、深い森の中に蠢く4つの影があった
赤服A「糞…なんてこったい」
赤服B「愚痴ってる暇があるなら探せ、あいつさえ手に入れば全て終わる」
赤服A「わかっている、命令するな…!」

草木をかき分け何かを探す怪しい集団。特徴的な鮮やかな赤色のスーツ、そして鮮やかな赤色に染められた髪。不審者だ。
何かを探すこと半時…森の一角が緑に輝く、静かな森に怒号が響いたっ!

赤服C「居たぞ!!こっちだ!!」
赤服B「追え!絶対に逃がすな!!必ずゲットしろ!」
赤服C「わかってる援護を出せ!時渡りされたら取り返しがつかないゾ!」
赤服B「AとDが向かった、痛めつけてでも捕まえろ」

森の中で交わされるコンタクト、パシュンパシュンパシュンと3つの軽快な音が響く。
A、C、Dはそれぞれの「ポケモン」が「モンスターボール」から繰り出される!

赤服A「デルビル!悪の波動!」
赤服D「ベトベトン!追い打ち!」
赤服C「キリキザン峰うち!!」

炎と刃、毒手が逃げる1匹のポケモンに向けられ放たれる!
そのポケモンは狭い木々に阻まれ避けることができず全ての攻撃をモロに受けてしまった

赤服A「ふぅ、手間を掛けさせやがって」
赤服B「まぁいいだろう、回収して本部に連れ帰るぞ」
赤服A「あぁ、全てはポケモン世界の破滅のために」
倒れたポケモンは赤服たちに連れ去られてしまう。そしてまた森に不気味な静寂が戻る。
………………………


1か月後、世界は滅んだ。


ポケットモンスター縮めてポケモン。この世界の不思議な不思議な生き物。空に、海に、大地に、街に、この世界のありとあらゆる場所で目にすることができる。 その数は、100、200、300...いや、それ以上かもしれない。
この少年、マサラタウンのサトシ!…
ではなくこれはポケモンの世界とは関係のない、『ただどこにでもいる平凡な少年』の奇妙な奇妙な物語。


 ポケットモンスター外伝SS ‐時空を超えた願い‐


???「ジラーチ、目覚めて…願いを聞いて!!」
いつの時代か、どこの世界かも知れない洞窟奥地天井に円のような穴の開いた洞窟で響く1つの声、少女の声。
悲痛に満ちた声、それに答えるように1つの石が鼓動する。蒼く蒼く輝き解き放たれる

ポケモン図鑑『ジラーチ、ねがいごとポケモン 。1000年に1度、7日間だけ目覚め、3度だけ願いを叶えるといわれている伝説のポケモン。』

少女のポケットから鳴る機械の声、ポケモン図鑑が解き放たれたポケモンの名前、分類を告げる。
少女は安堵の表情をになり泣き崩れてしまう。

???「よかったぁ…よかった…言い伝えはほんとうだったんだ」

泣き崩れてしまった少女にジラーチはアタフタしどうしようどうしようと言った表情で少女の頭を優しく撫でる。

???「…ん、ジラーチ……願いを、聞いてほしいの」

泣き収まった少女はジラーチをじっと見て言う、真摯に真っ直ぐに。それをジラーチは真っ直ぐ見返し待つ。

???「未来を…滅びの未来を救って!」

突拍子もない、彼女は無理難題をジラーチに頼む、必死に泣き止んだのにまた泣き、泣きすがる様に…
そして、ジラーチは……頷いた。
突如ジラーチの頭にある短冊に文字が浮かぶ上がる

【未来を変える】

浮かび上がる。そして腹部の目が見開かれそれが天井、穴の開いた天井に向け一筋の光が空に放たれる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ここは私たちと何の差し障りのない世界、同じ現実の世界。

―神奈川県横浜市―

ある家、ある少年はベッドに寝転びゲームをしていた。

???「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアまた運ゲーかよオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

この少年の名は一条 祐樹(ひとすじ ゆうき)ごくごく普通の高校2年生だ。飽きもせず毎日ポケモンをプレイし、バイトもせずに勉強もせずにただ時間を浪費する所謂『学生ニート」だ。今日も今日とて3DSでポケモンをプレイし『レート』に向かい絶叫を上げていた。

祐樹「あー畜生…糞鍵どうにかしろよ増田ァ…やってらんねぇ、寝よ」ポケモンポイー
マッマ「コラアアアアアアア祐樹あんた宿題はないの!?」
祐樹「もう終わったよ(大嘘)寝るから起こさないでよね」

これである、もはやダメ人間まっしぐらの人間であった。
横になり目を閉じるとあとは速い、数分後には夢の中だ。

祐樹「……」
…………
???「あなたに、未来を、託します」

そんな声が一瞬、響いたような気がして目が覚めた。
気のせいだろう、寝ぼけてたんだ…もう一回寝よう二度寝だ二度寝。
彼はそう言ってまた寝てしまった………。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


眩しい…日差し入り込み過ぎ しかもなんかうるさいし
ガウ・・・・・・ブゴォ・・・・・・・ドラァ・・・・・・・
うるさい、静かにしてくれ…眠れないだろ…
???「フィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

祐樹「ああああああああああああああああああうるせえええええええええええええええ!!」

耳元で何かに大声で叫ばれた、たまらず跳ね起きその犯人を見る。
そして、あぁ夢かと思い気が遠くなっていまう。

ニンフィア「ふぃあ!」

ニンフィア、イーブイの進化系。第六世代から参戦したフェアリータイプの中で上位に位置するポケモン。祐樹の嫁ポケ……それが目の前に、目の前に

祐樹「居たアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?ってかここはどこだ!?」

驚愕。只々驚愕する。目の前にポケモンがいてしかも詩文が寝ていた場所は見知らぬ森の中。いやそれだけじゃない、ニンフィア以外のポケモンもそこにはいた。

ファイアロー「アロー!」
ガルーラ「がるっ!」
ボルトロス「バァル!!」
ゲンガー「うっしっし」
スイクン「クゥン」

祐樹「……」(え?何これ…夢?夢なの?…痛ってぇ!!覚めない、ってことは…)

ここまで来たら感づいてしまうだろう、そうこれは紛れもない《現実》だ

祐樹「う、嘘だろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」




1章 崩壊
To be continued



[80] [3.2]ケーキ作るよ!

投稿者: 御影 投稿日:2015年12月12日(土)22時37分41秒 203-135-209-4.ppp.bbiq.jp  通報   返信・引用

 俺の名前は鼎(かなえ)。
 苗字もあったが、数年前のテロで家と家族と友人が燃えたからもう必要ない。

「……」

 さて、突然であるが俺は今絶句している。

 理由は簡単だ。誰から影響を受けたのやら、突然七一五が料理をやりたいとか言い出した。
 連絡もなく俺の部屋に押しかけてきて、ケーキ作るとか言い出した。
 もちろんそこまでは良い。料理くらい好きにすれば良い。趣味は大事だ。
 ゲームと漫画くらいしか趣味のなかった俺と比べれば、良い趣味だと思う。
 ぶっちゃけ一人でやれとも思ったが、命を救ってもらった恩もあるので快く迎え入れた。
 で、両手でなんかの箱を抱えているから、何かと思って見てみれば全自動ケーキ作成機ときたもんだ。

「お前さ……料理やりたい、つって買ってきたのが全自動ケーキ作成機ってなに、ナメてんの?」

 やる気が微塵も感じられないその選択に苛立ちが募り、つい本音が出る。
 お前の料理やりたいっていう気持ちなんてそんなもんかと。

「えっどうして」
「どうしてじゃねぇよ!! 全自動ケーキ作成機って、ケーキの材料を入れたら勝手にケーキが出来るやつだろ! 料理関係なくねぇ!?」
「えぇー、え、あの……鼎、もしかして石包丁から作れとか言い出す派かい……?」
「あっお前さては馬鹿だな」

 流石に石包丁でケーキ作れとは言わない。そもそも包丁だけじゃないだろ調理器具。混ぜるやつとか。
 料理に調理器具が必要。それは当然のことだ。俺もそれはわかる。
 だが、材料入れてスイッチ入れるだけで完璧なケーキが生成されるこの機械を用いたそれは、はたして料理と言えるのか。
 少なくとも俺は言わないと思う。だってほら、やっぱなんていうか過程とかそういうのあるじゃん……。

「すまない、鼎に美味しいケーキを食べさせてあげたいと思って……」
「……いやお前俺においしいもの食べさせたい云々じゃなくて、ただ単にちょっと料理やってみたいだけだろ? 正直言ってごらん? 怒らねぇからよ」

 別にケーキくらい普通に買って食べるし……とは流石に言えない。
 もちろん声を大にして叫びたいが、そこまで無粋じゃない。

「はぁ……わかった。俺が悪かった。とっかかりは大事だよな、最初はこんなもんでいいんだよな」

 仕方なく折れてやることにする。こういうのはやる気が大事だ。そういうことにしておこう。
 実際にやってみて、楽しいと思えばちゃんとした方法にも手を伸ばすだろう……伸ばすよな?

 俺の不安をよそに、七一五がさっそく箱を開けて機械を取り出してテーブルの上に置く。

「まずは、ケーキの材料を入れればいいのかな」
「あぁ、材料ももう買ってきてあるのか」

 今から買いに行かなくちゃいけねぇのかと思ったが、材料も用意してあるらしい。
 いきあたりばったりかと思ったが案外考えてるところもあるのか。ちょっと意外だな。
 俺は箱に残った説明書を取り出して読みながら、機械のクリームをセットする場所と苺をセットする場所などを確認していると、

「ここにケーキをぶち込めばいいのだろう?」

 突然上から“既に完成されたケーキが”眼前に降ってきた。
 何を言っているのか分からないと思うが、俺ももうどうしていいのかわからない。

 七一五が何をしやがったのかを具体的に言うと、ケーキを機械に、それもよりによって小麦粉を入れるための穴にねじ込みやがったのだ。

 あぁ、そういえばケーキ作成機の箱とは別に、もう一つ箱があったな。
 確かに、いかにもケーキの箱っぽかった。ハハハ、盲点盲点。
 いや、でも普通ケーキ作成機買ってきてその上ケーキを買ってくるとか思わないだろ。
 あまつさえ、それをケーキ作成機に材料としてブチ込むとは思わないだろ。
 説明書読めよ。そもそも、コンセントすら入れてないじゃん。
 あぁ、言い訳するつもりはない。そうだとも、一重に俺の監督不行届であろう。

「OK,七一五。お前ちょっと正座な」
「えっ」

 このあと無茶苦茶説教した。

--- --- --

「アイゼル、お前がついていながら何で止めなかったんだ」
『面白かったからだが』
「OK,画面叩き割っていいか?」
『それは構わないが修理費は七一五持ちだぞ』

 パリーン


レンタル掲示板
48件の内、新着の記事から10件ずつ表示します。

お知らせ · よくある質問(FAQ) · お問合せ窓口

© GMO Media, Inc.